一月場所11日目、結びの一番、隠岐の海=正代は、二度物言いがつく相撲となったが、二度とも協議の結果に疑問がある。
最初の一番、行司式守伊之助の軍配は隠岐の海に上がって物言い。協議の結果取り直し。取り直し後の一番も軍配は隠岐の海に上がってまた物言い。今度は差し違えとなった。隠岐の海の勇み足との判定。
二番ともポイントは隠岐の海の足と正代の体の有無。私の見たところでは、隠岐の海の足が出たにせよ、どちらの相撲もその時点で正代の体は裏返って死に体になっていた。そこを加味する必要があったのではないか。吊った場合の送り足に準じた判断もありえたと思う。
正代自身、二番とも負けたと思ったはずだ。最初の一番で負けにされても文句は言えない内容だったし、二番目も同様で、「相撲に勝って勝負に負けた」と言えるものではない。
まさか審判団、正代を優勝争いで後退させずに2敗を維持させるための配慮ではないだろうが。
式守伊之助は立行司にしては差し違えの多い人だが、この日に関しては気の毒な差し違えだったと思う。
判定の是非は別にして正代の相撲そのものについて言うと、強引過ぎた。攻め急いだ。せっかく取り直しを拾ったのだから、二番目は切り替えるかと思ったら同じだった。隠岐の海への苦手意識が相当あるのだろう。
ついでに他の相撲について簡単に。
宝富士=明生は、明生が宝富士の左を見事に封じたのに目を見張らされた。
阿武咲=大栄翔は、大栄翔がすばらしい当たりで一気に攻め込んだが、却ってそれが災いしたか、阿武咲にかいなをたぐられてしまった。好調の両者、似たタイプの両者であれば、もっと互いに後に退かない突き合いになるかと思ったが、意外だった。仮にそういう相撲になっていたら、大栄翔が勝ったかもしれない。貴景勝の今場所もそうだが、突き押しの相撲というのは難しいものだ。
この他では、琴恵光(対明瀬山)の力強さ、翠富士(対德勝龍)の鮮やかな肩すかし、照強(対竜電)のこれも鮮やかな足取り、翔猿(対琴勝峰)の動き、それぞれ持ち味が存分に出た相撲だった。
髙安、照ノ富士、朝乃山もいい相撲で白星を重ねた。
優勝争いは正代と大栄翔が2敗で並ぶ形になったが、正代が相撲を立て直せるかどうか。大栄翔がこのまま残り全部勝つとも限らないので、優勝ラインは3敗、あるいは4敗まで下がるかもしれない。とにかくまたまた平幕優勝でなく、三役、できれば大関の優勝を期待したいところだが。