29日(月)、サントリーホールで行われた、東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴きに行った。
浦安シティオーケストラで、現在ブルックナーの4番に取り組んでいるので、この曲を一度実演で聴きたいと思い、チケットを買い求めた。
ブルックナーの7番、8番、9番あたりならともかく、4番の場合は、今自分で弾いていなかったら聴きに行こうとは思わなかっただろう。勉強のためだ。
銀座山野楽器を出て銀座線に乗り、溜池山王からサントリーホールへ。
とにかく暑いったらない。
どこかで夕食をとることにしていたので、ホール向かいのアーク森ビルへ。エスカレーターで3階に上がると、通路の椅子には人がたくさん座っている。飲食店の順番待ちの列ではない。ホールの開演まで暑さを逃れて過ごしたい人たちなのだろう。
このビルの飲食店も選択肢が少なくなった感じがあるが、私としては、一時の閉店から復活した水内庵で蕎麦、と決めていた。幸い空いていてすぐ入れた。
食べてホールへ行くと既に開場しており、入る。
2階に上がって客席扉から中に入ると、さすがに冷房が効いている。寒いくらいだ。
●東京フィルハーモニー交響楽団 第1003回サントリー定期シリーズ
日 時 2024年7月29日(月) 18:15開場 19:00開演
会 場 サントリーホール
指 揮 ダン・エッティンガー
ピアノ 阪田知樹
プログラム冊子から。
私の席は2階LD2列11番。ステージから少し距離はあるが、見やすい席だった。
エッティンガー=東京フィルのコンビでは、19日(金)に東京二期会の「蝶々夫人」の演奏を聴いたばかりだ。10日後の今回は、純オーケストラの演奏会。
前半のモーツァルト、弦は10・8・6・5・4。
第1楽章は、トランペットとティンパニがかなり鋭い突出した音を出していた。弦はノンヴィブラートでなく、潤いのある音だったので、ピリオドアプローチを指向しているわけではないと思われた。小編成ではあっても、ある程度のスケールを求めたのかな、という感じだった。また、木管楽器が最小限の編成ながら、大変充実した音で書かれていることもわからせてもらった。
一方、ソリストは、スケールの大きさや外へ発散する指向性の演奏ではなく、むしろコンパクトで柔らかいピアノだった。
第2楽章は、改めて美しい音楽だと思わされた。これはもう、完全にロマン派の音楽ではないだろうか。演奏がということでなく、モーツァルトの書いた音楽自体が、である。
第3楽章も充実したオケがソロを包み込むといった感じの演奏だった。
盛んな拍手に応えてのアンコールは、モーツァルトを何かかと思ったら、まったく違う世界のドビュッシーだった。
15分の休憩。2階の男性用トイレはかつて演奏会場で見たことがない行列。さすがブルックナー。
そのブルックナーの弦は、14・12・10・8・7。
1楽章は、指揮者のテンポ設定に、速めのところ、ゆっくりなところと、結構差があると感じた。前日の浦安シティオーケストラの高弦分奏でも、トレーナーのY先生から、ここはテンポが速くなる可能性がある、など、指導されたが、エッティンガーのブルックナーも、終始同じテンポということでなく、ブロックごとのテンポの違いを自然につなげていく感じだった。
これも前日の分奏で、「ここはセカンドの音を強調して」など、オケ全体の中での聞こえ方の指導がいくつもあったが、実演のプロオケを聴いて、なるほどと納得する箇所もあった。
練習記号Kからのヴィオラのソリはさすがプロオケで、立派な音だったが、途中から金管が重なってくると聞こえなくなるのがわかった。ここはそんなにシャカリキになって弾かなくても良い? そう言えば、以前の合奏でトレーナーのK先生が、そこはそんなにがんばりすぎなくていいですよ、とおっしゃっていたのを思い出す。
2楽章は、こうして実演で聴いて、いい曲だなと思った。
ブルックナーで唯一サブタイトルがついている4番だが、個人的な印象としては、他のシンフォニーと格別違うところはなく、何故この曲だけサブタイトル付きなのか、と以前から思っている。それに、「ロマンティック」というサブタイトルについても、どこが「ロマンティック」なんだろう、とも。
しかし、この2楽章に関してだけは、まあ確かにロマンティックかな、と思えなくもなかった。
冒頭のボウイングは、我々のものとは全然違う。
練習記号CとIのヴィオラソリ。こちらは1楽章と違って終始よく聞こえた。ヴィオラを他の弦のピツィカートが支えるこの部分はとても美しいと改めて感じた。
東京フィルのヴィオラ群は、強弱の変化の幅が大きかった。我々もできればこのようにやりたいものだ。
あと、2つのソリの間にある、練習記号Eからのくだりは、ヴィオラが主役のつもりで前に出ていいんだ、と思った。
練習記号Mのgの8分音符の刻みは、ppの間は弓先で弾かれていた。参考にしたい。
その刻みの後のピツィカートも、ヴィオラの聴かせどころだとわかった。ここもがんばらないと。
結構ヴィオラの役目が大きいな。
3楽章は、速めのテンポでのかっちりした演奏。
主部の終わり、練習記号Oからは、途中で音量を落として、階段状に大きくしていった。これは楽譜にはない演出。
4楽章も、1楽章と同じでテンポの変化が目立った。
練習記号Bからは、ヴィオラとしては目立っていいところなのだと思った。やってみよう。この楽章にも練習記号Mの前など、ヴィオラの聴かせどころがいくつもあるのがわかった。
練習記号Lの4つ前からの、私が以前から歌謡曲みたいだと思っている部分は、プロオケの実演で聴いても歌謡曲だった。違和感あるなー、ほんとに。
パート譜で言う最後のページ、練習記号Vから曲の終わりまでの息が長い盛り上げは、聴いているとここの推移をちゃんと作っていくのはすごく難しそうだと感じる。
この部分、エッティンガーは非常に遅いテンポで運んだ。
最後の和音が終わっても、指揮者が腕を下ろすまで場内は静かだった。前半のモーツァルトは、曲が終わるなり拍手と歓声が沸いたのだが、ブルックナーでは長い沈黙となった。
拍手が始まってからは盛大なカーテンコール。
ヴィオラが、確かホルンの次くらい、金管よりも早い時点で立たせてもらっていた。弦セクションが順番に立つのはよく見るが、そうでなく、ヴィオラだけがというのは珍しいと思った。やっぱりこの曲はヴィオラの役割が大きいと痛感。
反面、その後、木管も順番に立っていたが、この曲については木管ってあんまり目立たないなと思った。
オケのアンコールはなかった。
2曲プロなのに、終演は21:22。プログラム冊子の時間表記では2曲で95分(休憩15分)とされていたが。
それはともかく、取り組んでいるブルックナーの4番の実演に接することができたのは、とても意義があった。
今後の練習へのモチベーションが高まった。
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ブルックナーの途中で突然に歌謡曲?
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