25日(土)、すみだトリフォニーホールで行われた、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴きに行った。

マーラーの9番、1曲プロである。
昨年、オーケストラ・モデルネ・東京でこの曲を弾いた。長いヴィオラ人生の中で最も難しい曲だった。ちゃんと弾けたわけではまったくなかったが、この曲に取り組んだことは、これまた長いヴィオラ人生の中で指折りの経験となった。
本番がおわって、とにかく一度このシンフォニーを実演で聴きたい、と思っていた。
指揮者が誰であれ、オケがどこであれ、生の音で聴きたい、と思ったのだ。
最初に情報を得たのがこの演奏会で、飛びつくようにチケットを買い求めた。
この日の夜には、うらやすシンフォニエッタの練習があるので、楽器を持って家を出た。錦糸町駅のコインロッカーに楽器を入れて、ホールに向かった。

●新日本フィルハーモニー交響楽団 第660回定期演奏会 トリフォニーホール・シリーズ
日 時 2025年1月25日(土) 13:15開場 14:00開演
会 場 すみだトリフォニーホール
指 揮 佐渡 裕
プログラム冊子から。


入場後もらったメンバー表。弦は16型だ。

私の席は、2階3列19番。
マーラーは好きだが、9番という曲を長く苦手としてきた。
しかし、ここ数年、だんだん好きになってきた。少なくとも、同じマーラーの他のシンフォニーにはない独特の魅力がある音楽だということは感じるようになった。
そして昨年の演奏体験で、さらに気持ちが変わったところがある。
そんな経過なので、この曲の実演を好んで聴きに行くことはなかった。これまで何度聴いただろう。
はっきり憶えているのは、1984年、千葉県文化会館で、今回と同じ新日本フィルを小澤(征爾)さんが振った演奏会に行ったことだった。小澤さんの鬼気迫る指揮ぶりは今でも記憶に残っている。
その2、3年後に、山田一雄氏の指揮で聴いたことがあった。オケがどこだったか思い出せないのだが、新宿文化センター。妻と一緒だった。何故この曲を妻と聴きに行ったのかこれも定かに思い出せないが、会場への道々、妻に対して、マーラーが「9番のジンクス」を怖れて9番目のシンフォニー(大地の歌)には番号をつけず、次に作ったシンフォニーに9番とつけたら10番を完成できずに死んでしまった、という今では誤った説と言われている話を、得々としゃべったのだけは憶えている。
他にどこかで聴いただろうか。
開演の14時、佐渡さんがマイクを持って1人で登場して少ししゃべった。
・今年は大阪で万博があるが、前回の大阪万博、1970年には、世界中から有名な演奏家が来日した。カラヤン=ベルリン・フィル、バーンスタイン=ニューヨーク・フィル。
・カラヤンはベートーヴェンのシンフォニー9曲を全部演奏し、バーンスタインはマーラーの9番を演奏した。そのマーラーは伝説的名演で、当時まだあまり知られていなかったマーラーが日本でブームとなるきっかけになった。
・当時9歳、小学校5年生の私が初めて買ったレコードが、バーンスタインのマーラーだった。1番から順に買っていって、レコードをかけながら指揮をしていたものだった。
そんな話をされて舞台袖にひっこみ、入れ替わって楽員が入場。
「自分で弾く経験をしてから初めて実演で聴くマーラーの9番」が始まった。
やはり一度弾いているだけに、聴いていて違うものがあった。
だた、1楽章から3楽章までは、この密度の濃い音楽の、時間を追っての経過をつぶさに拾いながら味わうことができなかった。これは演奏側の問題でなく、当方の主にメンタル面のコンディションの問題だ。
2楽章を聴いていて、私がついていけなかったあの楽譜、臨時記号や装飾音符やトリルやらだらけだったあの楽譜を、この人たちは全部ちゃんと弾いてるんだなあ、としみじみ思った。
4楽章に入って、こちらも聴く体勢が整ったか、引き込まれて聴いた。
この楽章をもう一度弾いてみたい、と思った。
このシンフォニーの核心は、やはり1楽章なのだろう。このシンフォニーならではの世界は1楽章にあると思う。
しかし、4楽章の重み、深さも痛感しながら聴いた。
全曲の最後、弦の弱音だけがはてしなく続いていく時間。静謐に耐えきれない咳があちこちから聞こえた。
聴き終えて、やはりこの曲がマーラーのシンフォニーの中では最高傑作なんだろうな、と思った。
高校の時からマーラーを聴いてきて、どれが好きかと考えた時、常に1番、2番、3番が飛び抜けていた。
10年以上前、好きな順に並べてみたことがあったが、その時の順位はこうだった。
1位 3番
2位 2番
3位 1番
4位 5番
5位 6番
6位 大地の歌
7位 9番
8位 4番
9位 7番
10位 8番
11位 10番
今はちょっと違う。最高傑作と実感した9番を、1位に持ってくる気まではないが、たぶん1番を抜いて3位には来るかな。かつては7位だったのに。
それはさておき、また近い内にどこかのオケが9番を演奏することがあれば、是非聴きに行きたい。あと2回、3回は。
演奏にも挑戦してみたいものだ。弾けないだろうけど。
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オーケストラ・モデルネ・東京第5回演奏会本番終了