naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

新国立劇場 「トスカ」

3日(水)、新国立劇場に出かけた。

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新国立劇場でオペラを観るのは、昨年9月の東京二期会の「フィデリオ」以来。新国立劇場制作のオペラとなると2019年5月の「ドン・ジョヴァンニ」以来となる。

 

また、「トスカ」の実演は、2017年6月に愛知県芸術劇場パレルモ・マッシモ劇場の来日公演を観て以来である。


この日は、5回上演の千秋楽。これまでの4回はすべて午後の公演だった。千秋楽が唯一の夜公演だが、緊急事態宣言下とあって、当初19:00開演予定だったのが17:00開演に変更された。20時には終演になる設定である。

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フィデリオ」の時もそうだったが、入場時には連絡先等を書いて提出(あらかじめWebから用紙をダウンロードして記入して行った)、検温、手指消毒もある。中に入ると飲食物を売る店は出ていない。特にオペラの場合これはさみしく感じる。

 

休憩時の写真。持ち込んだものを食べるのもNG。

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私の席は、2階3列20番。65歳以上の高齢者割引あり。

 

入場時にもらったペーパー。

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プログラム冊子の表紙。

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プログラム冊子に書かれている過去の公演記録によると、「トスカ」は2000年を皮切りに最近は2年置きに上演されており、今回が8回目。すべてアントロネット・マダウ=ディアツの演出である。オケは過去7回東京フィルだったが、今回初めて東京交響楽団がピットに入った。

 

舞台両脇に、日英2種の字幕が出る。英語の字幕が出るのは初めて見るような気がする。

 

久しぶりに「トスカ」を鑑賞して、やはりよくできたオペラだとつくづく思った。

 

オケが物を言っている。

 

プッチーニの場合、テイストとしてちょっと甘ったるかったりセンチメンタル過ぎたりするところもあるが、歌の魅力は抜群だし、物語のわかりやすさ、ドラマ性、いい意味での通俗性は傑出している。

 

一つ欲を言えば、合唱のウエイトが低いことか。この点では、「カルメン」あるいは「トラヴィアータ」の方が上だ。

 

主役3人の歌はどれもすばらしいものだった。3人とも、新国立劇場初登場とのこと。

 

男声の声質として、テノールはそう好きではないのだが、フランチェスコ・メーリのカヴァラドッシは、その私もうなる見事な歌だった。そしてそれ以上にダリオ・ソラーリのスカルピアが立派だった。このオペラの登場人物ではスカルピアがやはり一番魅力的なキャラクターだと思う。テ・デウムは圧巻だった。

 

トスカのように嫉妬深い女性は、男にとって手を焼くところがありそうだが、カヴァラドッシはそうしたところを見せずにトスカを愛する。しかし、2人がスカルピアにつけこまれることになったのは、その彼女の嫉妬深さの部分だ。一方、そのスカルピアにしてもトスカを我が物にしようとする好色さに溺れたことが最後は命取りになってしまった。

僅か1日の間の出来事だが、凝縮されたドラマは何度観ても見ごたえがある。

 

トスカが「歌に生き恋に生き」を歌う場面は、ストーリーの流れを一時中断させる面があり、プッチーニ自身もそのことを嫌っていたそうだ(トスカを当たり役としたマリア・カラスは、このアリアは要らないと言ったことがあるらしい)。今回はトスカが歌う間、スカルピアがさりげなく座をはずして外へ出て行く形だった。

 

オペラの常として、筋立てなどが現実世界に照らしておかしいなと思う場合がある。このオペラで一番感じるのは、スカルピアが刺殺されたことが、カヴァラドッシ処刑の時点まで発覚しないことだ。これはちょっと考えにくい。犯人のトスカとしては本来はすぐさま逃亡すべきところだ。偶発的な犯行だったからカヴァラドッシとの逃亡の段取りは存在せず、処刑場で彼と会えるまで待たざるを得なかったのだろう。まあそうでなければこの第3幕そのものが成り立たないわけではあるのだが。

 

カーテンコールは、最近のオペラでよくある、緞帳が開いたままで歌手と指揮者が横一列の形になってステージ奥と前面を行ったり来たりする形で進行したが、通常と違うのは手をつながなかったこと。新型コロナウイルスのためだろう。オーケストラの演奏会で、指揮者とコンマスが握手しなくなったのと同じだ。

 

緞帳が閉まった後、文字通りのカーテンコールも続いた。カヴァラドッシ役のメーリが一番大きな拍手を贈られていた。

 

プッチーニのオペラ、「ボエーム」、「バタフライ」、「トゥーランドット」も観てみたい。「ボエーム」は6月に日生劇場で公演があるので、是非行きたいと思う。

 

新国立劇場のサイトに、1月25日(月)の公演の動画が載っていた。

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