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「クラシック音楽演奏・鑑賞にともなう飛沫感染リスク検証実験 報告書」

17日(月)、クラシック音楽公演運営推進協議会、一般社団法人日本管打・吹奏楽学会が、「クラシック音楽演奏・鑑賞にともなう飛沫感染リスク検証実験 報告書」を発表した。

 

NHK交響楽団名古屋フィルハーモニー交響楽団東京佼成ウインドオーケストラヤマハミュージックジャパン新日本空調日本放送協会の協力のもと、クラシック音楽の鑑賞及び演奏に伴う、新型コロナウイルスの感染リスクを検証した実験の報告書である。

 

「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」というハッシュタグのついた、このプロジェクトのことは、以前から知っていて、その結果の発表を心待ちにしていた。

 

報告書は、パワーポイントで実に107ページというボリュームである。

   ※↓こちら 一般社団法人日本クラシック音楽事業協会のWebサイトに掲載
       https://www.classic.or.jp/2020/08/blog-post.html?fbclid=IwAR2bnffyBs1kfrhQoImjSSsdKbnfcQqHtpXU1doZ0Sd9XglJs7xnCnFDACo

 

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冒頭、「実験目的」には、こういう趣旨のことが書かれている。

 

再開されつつあるクラシック音楽のコンサートでは、演奏者間、客席ともに、ソーシャルディスタンスが推奨されている。しかし、そのことで、前者においてはアンサンブル上の支障、後者においては聴衆数の制限で興行面の支障が生じている。

5月にベルリンの専門家たちによって、弦楽器奏者間は1.5メートル、管楽器奏者間は2メートルを確保することが提唱されたが、それがアンサンブル上の支障に加えて、選曲面での制限も生んでいる。

新型コロナウイルスの問題はまだ続くと思われる中、ソーシャルディスタンスを継続するべきかどうか、検討が必要である。

こうした観点から、飛沫の微粒子数を計測することにより、「従来の距離」と「ソーシャルディスタンス」との、感染リスクを比較することにした、とのことである。

 

演奏者については、従来の距離とソーシャルディスタンスの比較、客席については、従来通り隣同士に座る方式と、1席ずつ空けた座り方の比較が行われた。

 

これまで見聞した同種の検証行為は、主にステージ上の感染リスクにフォーカスしていたが、この実験では、客席の聴衆についても対象にしているところが特徴的だと思う。

 

実験は、7月11日(土)~13日(月)、長野県茅野市にある、新日本空調クリーンルームというところで行われた。

 

各種木管楽器金管楽器、弦楽器について、また、歌唱行為について、さらに、客席における会話や咳や発声(ブラボー)について、検証された。客席の検証は、マスクをした場合、しない場合に分けて行われている。

(弦楽器は、ヴァイオリンとチェロのみ。ヴィオラコントラバスは参加していない)

 

「実験結果に基づく考察」には、以下のまとめが書かれている。

 

客席の実験では、マスクを着用していれば、1席空けた形でも、連続で着席する形でも、飛沫を介する感染リスクに大きな差はないとのこと。これは非常に大きな意味を持つ情報だと思う。すべてののジャンルのコンサートには当てはめられないかもしれないが、沈黙して聴くクラシックの場合にあっては、入場者数を制限しなくとも問題がないかもしれない。

 

個々の楽器に関しては、ホルン、トランペット、トロンボーンについて、若干の留保的な記述があるものの、基本的には、従来の間隔でもソーシャルディスタンスでも、飛沫を介する感染リスクに大きな差はない、との結果である。

 

以上は飛沫を介した感染についての検証であり、接触感染については別途の注意が必要とされている。ただ、接触感染のリスクは日常生活においても同様なので、演奏会場、ステージ上でも通常の感染防止策が講じられていれば、問題はないと理解して良いと思う。

 

これについては、「「演奏中の飛沫の対策」以外に行う感染対策について」というページがあり、練習も含めた感染対策についての具体的かつ詳細な提言がなされている。

(この中では、対面する形になる指揮者と演奏者は、2メートルの間隔をとるべきと書かれている)

 

また、「本実験の限界」というページもあり、丁寧で詳細な記述がなされている。

 

全体を一読し、この実験及び報告書が、きわめて真摯な姿勢に基づいていることが伝わってきて、大変感銘を受けた。

 

練習において、また演奏会の運営において、書かれている感染対策に留意して臨めば、演奏者も客席も、必ずしもソーシャルディスタンスをとらなくとも、有意なリスクはない、と理解することが可能だ。

 

そのことにより、この実験が目的とした、ソーシャルディスタンスに伴う、興行上の制約や、選曲上の制約は、一定程度以上、捨象することができるかもしれない。

 

この報告書の末尾には、「免責事項」として、「本文書に記載されている事項の理解、解釈、および実務への反映については、その利用者ご自身の責任において行っていただきますよう、お願いいたします」とある。

 

その通りだと思う。

 

この貴重な報告書が示してくれたものは、大いに参考になる内容であるが、身近な現実の活動、例えば、所属オケで今後練習を行い、演奏会本番を目指す行為に際しては、ここに書かれた内容をよく理解し、あくまで自分たちの責任のもとに実際の運用を決めるべきであろう。

 

我々はアマチュアである。

 

これまでも書いてきたように、アマチュアは、基本的にはプロよりも慎重な対応が必要だと思う。

 

この報告書も踏まえた形で、今後、プロオケがどのような対応をとっていくのか、見定めながら、自分たちの活動のあり方を決めて行くべきだと考える。

 

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